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円筒形のタワー (6月25日 10時)
太陽の光が降り注ぐ。その光が、X字型に組まれた鉄骨とむき出しのコンクリートの量感を力強く浮き立たせている。タワーは、大きさが違うふたつの楕円形を、大きな方を下に、わずかに小さな方をその上に載せ、大きな楕円形の屋上には鉄骨で組んだ塔が何本も同じ間隔でぐるりと並んでいて、その上の小さな楕円形の屋上には船の煙突か空気口のような、あるいは巨大な伝声管のような折れ曲がった管が何本か、こちらに向かって大きく口を開けている。タワーからは、建物の本体である四角い高層ビルに向かって空中を横切るブリッジが差し渡され、大通りはその下を貫いて走る。高層ビルは横に追り出した低層部を従えて縦に突き上がった、それ自体でも独立した建物で、そのあちこちに、看板みたいに横長のボードが設けられている。建物はまるで船の船橋のようだった。
その巨大な建物が、僕に向かってまっすぐに進んでくる。船橋の上、つまり楕円形のタワーの頂上、空中を飛ぶブリッジ、そして四角い高層の建物の屋上には、建物全体よりも高い、船のマストのような鉄塔が建ち、それらを結んで無数の電線が張り巡らされている。強く引っ張られた何本もの電線どおしが広げられたり絞られたりしてできた正三角形と逆三角形のパターンが、建物の上空に据えられた巨大なアンテナのようだ。この世界に飛び交うすべての電波を捕えようとして開かれていると同時に、世界中に彼らの電波を発信させようと、ピンと張り詰めたそのアンテナを屋上に戴せ、地面の下に隠れた推力で建物全体を前に向かって発進させるため、今まさに係留を解かれた最新鋭のクルーザー。