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普通の人 (6月25日 4時)

手近く人間の第六感で例を引けば、或る人間が或る一瞬間に、理窟も何も考えないで、ただ「これはこうだナ」とか「それはそうだナ」とか感じた事が百発百中図星に的中っている事で、新聞記者が朝眼を覚ますと同時に「今日は何か事件の起りそうな日だな」と思ったり、又は刑事巡査が犯罪の現場に来ると直ぐに「犯人はまだ近くに居るな」と感じたりするのが、まるで偶然のように事実と符合して行くのは皆、この第六感の作用に他ならないのである。その他、博奕打が相手の懐合いを勘定したり、掏摸やインチキ師が「感付かれたな」と感付いたり、馬道あたりの俥屋が、普通の客としか見えない男を捕えて「吉原まで如何です」と図星を指したりするのも皆この「第六感」の一種に数えられるのである。
 しかも、私の考えに依ると、斯ような第六感の作用は人間ばかりに限ったものでない。広く動植物界を見渡してみると誠に思い半ばに過ぐるものがある……否……人間世界に現われる第六感の実例よりもずっと甚しい、深刻な現象を到る処に発見する事が出来るので一々数えてはおられない位である。早い話が地平線下に居る獅子を発見して駱駝が慄え出したり、山の向うに鷹が来ているのを七面鳥が感付いて騒ぎ立てたりする。蛭が数時間後の暴風を予知して水底に沈み、蜘蛛が巣を張って明日の好天気を知らせ、象が月の色を見て狼群の大襲来を察し、星を仰いだ獺が上流から来る大洪水を恐れて丘に登る。

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