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二階の窓 (6月25日 4時)

話が又、少々傍道へ這入るようであるが、しかしここでちょっと脱線を許してもらわないと、話の筋道が無意味になりそうだから止むを得ない。
 あれ程、昏迷に昏迷を重ねて来た私が、何故にこのような猛然たる活躍を初めたか。もっと具体的に云えば、前記の通り取り付く島もないほどへたばり込んで、涙も出ないほど叩き付けられていた私が、たった今、カフェー・ユートピアで紫のハンカチを受け取って、自分が註文して喰ってしまった四皿の料理の名前をもう一度確かめると同時に、何に驚いてタクシーに飛び乗って、全速力の一直線で、狂人のように新宿めがけて飛び出したか……という理由を説明するには、是非とも私の体験と観察から生れた「第六感論」なるものを少々ばかり御披露させてもらわねばならぬ。そうして兎にも角にも世間の所謂「第六感」なるものが決して非科学的な、もしくは荒唐無稽なものでない。寧ろ恐ろしく科学的な、非常に深刻偉大な実在現象である事を、幾分なりとも認めてもらわなければ、かんじんのところで話の眼鼻がつかなくなると思うからである。
 読者も御承知の事と思うが、すべて新聞記者とか、刑事とかいうものは多少に拘らず第六感というものが発達しているものである。私は近い中にこの第六感が活躍する実例を種類別にして、纏めて、「第六感」と題する書物にして出版するつもりだから、苟くも探偵事件に興味を持つ人々は、是非とも一読せられたい……いや……これは広告になって申訳ないが、ここにはその内容の大要だけを述べさしてもらう事にする。
 ところで冒頭に断っておくがこの第六感というものは、千里眼、又は催眠術なぞという迷信的なものとは全然別物なので、あんなあやふやな奇蹟的なものではない。儼然たる科学の範囲に属する感覚である事である。

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