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紅茶を啜ってから (2月3日 11時)
診察に取りかかった。患者として扱いつけられたという以上の焼きつくような、しかし博士の良心によって適当に節制された愛の目の微笑み合っていることは、少し薄暗い電気の光りでは、庸三の目にそれと明白に映るわけには行かなかったが、毛布の裾をまくってとかく癒りのおそい創を見る時になって、彼は急いで部屋の外へ出てしまった。そしてどんな言葉が囁やかれたかは、知る由もなかった。
庸三は圧し潰されたような気持で、廊下を歩いていたが、ちょうどその時、婦人文芸雑誌記者のR――がやって来た。
庸三がR――を誘って、部屋へ入って来たころには、久しぶりの創の手当も済んで、博士は旧の椅子にかえっていた。庸三は鑵入りのスリイ・キャッスルを勧めながら、ずっと以前、同じ病院で、院長によって痔瘻の手術をした時の話などした。その時博士は独逸から帰ったばかりであった。