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クリスマスの仮装舞踏会 (3月12日 11時)
その火が髯の綿毛に移って、めらめらと燃えあがったことがあった。その時も彼は、これからここに敲き出そうとする、心の皺のなかの埃塗れの甘い夢や苦い汁の古滓について、人知れずそのころの真面目くさい道化姿を想い出させられて、苦笑せずにはいられなかったくらい、扮飾され歪曲された――あるいはそれが自身の真実の姿だかも知れない、どっちがどっちだかわからない自身を照れくさく思うのであった。自身が実際首を突っ込んで見て来た自分と、その事件について語ろうとするのは、何もそれが楽しい思い出になるからでもなければ、現在の彼の生活環境に差し響きをもっているわけでもないようだから、そっと抽出しの隅っこの方に押しこめておくことが望ましいのであるが、正直なところそれも何か惜しいような気もするのである。