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赤児が持っている (3月8日 11時)
一種の厭な臭いのよやくぬけて来た正一を、笹村は時々机の傍へ抱き出して来て、弄りものにした。そして終いには泣かした。
「可哀そうに、あなたあまりしつこいから……。」
お銀は抓られたり、噛まれたりする子供を抱き取りながら、乳房を口に当てがった。
思い立って人の少い朝湯へ連れて行くこともあった。するとその後からお銀がタオルを持って、揚げに来た。
「お父さんは赤ン坊を扱うのが上手ですよ。」
お銀は帰って来ると母親に話した。
赤ン坊はこの町の裏にいる、ある貧民の娘の背に負われて、近所の寺の境内や、日当りのよい駄菓子屋の店頭へ連れて行かれたが、外で賺しに菓子などを口へ入れられて、腹を壊すことも間々あった。お銀は困っているその子守の家族の口を、一人でも減らすのを功徳のように考えていたが、それも長くは続かなかった。