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買い物をして (2月6日 5時)

財布のすぐ貧しくなって行くのを怖れないではいられなかった。葉子の父は日本橋ではひとかどの門戸を張った医師で、収入も相当にはあったけれども、理財の道に全く暗いのと、妻の親佐が婦人同盟の事業にばかり奔走していて、その並み並みならぬ才能を、少しも家の事に用いなかったため、その死後には借金こそ残れ、遺産といってはあわれなほどしかなかった。葉子は二人の妹をかかえながらこの苦しい境遇を切り抜けて来た。それは葉子であればこそし遂せて来たようなものだった。だれにも貧乏らしいけしきは露ほども見せないでいながら、葉子は始終貨幣一枚一枚の重さを計って支払いするような注意をしていた。それだのに目の前に異国情調の豊かな贅沢品を見ると、彼女の貪欲は甘いものを見た子供のようになって、前後も忘れて懐中にありったけの買い物をしてしまったのだ。

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