今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:288 hit
ピーターパン症候群 (3月19日 17時)
コメ欄にて小説です。
このブログの最新エントリ
コメント一覧
「本当、子供っぽいよねー。」
『・・・。』
暖房もつけていないこの空間の中、本のページを捲る音が小さく響いていた。
妙に肌寒く、薄暗いこの空間は鬼虎の部屋だ。
部屋の隅で体育座りをする鬼虎の隣には、退屈そうな表情を浮かべた夢が居た。
夢は寒いのか、鬼虎の肩にピッタリとくっ付いた。
鬼虎の嫌そうな表情に気づいているのか否か、夢はそのまま口を開く。
「本当、子供っぽいよね。鬼虎くんはー。」
先程と同じ事を言う彼に、鬼虎は本へと落としていた視線を上げた。
『それ、は・・・貴方、でしょう。』
「違うよー。」
君が、だよ。
馬鹿にしたような笑みを浮かべ、夢はもう一度言った。
鬼虎はそんな夢の目を見つめたまま、無表情に返す。
『どうして、そう・・・思、の・・です、か?』
「わかってるんじゃないのー?」
ねえ、鬼虎くん。
ツンツンと頬を指先で突く。
パシッと乾いた音が空間の中に小さく響いた。
鬼虎が夢の指を手で払ったのだ。
トン、と本が床を転がる。
鬼虎は本に一瞬だけ視線を向けた後、すぐに夢へと戻した。
「どうしたのー?いつもならさっさと帰れ、って言うのに。」
『言っても、どうせ・・・帰らない、でしょう。』
「鬼虎くんにちょっかい出すの楽しいからねー。」
『・・・。』
話すだけ無駄だ。
そう判断した鬼虎は、先程落とした本を手に取る。
ペラ、と続きのページを開いた。
視線は縦に並んだ文字を追っていく。
よくこんな暗い部屋で読めるものだ。
彼の目は特別、という訳ではない。
それに気づいている夢は、横から鬼虎の前髪を引っ張った。
「ねーねー。」
『・・・。』
鬼虎は完全に無視を決め込むつもりだ。
mari0922 - 2013/03/19 17:00:37 |違反報告
-
「無視なのー?」
『・・・。』
反応無し。引く手に力を込める。
「・・・ねえ、鬼虎くん?」
『・・・。』
「どうせ内容なんて頭に入ってないくせに。」
大人ぶっちゃって、可愛くないなー。
ページを捲っていた鬼虎の指が、不自然に止まった。
「本当は読めないんでしょ?こんな暗い中。」
『・・・何、を・・・。』
「いつも帰れって言ってくるのに、どうして今日は言わないのかなー?」
『別に・・・。』
「帰ってほしくないんでしょ?」
寂しがり屋の鬼虎くん。
パンッと音を立てて本を閉じた。
『何が言いた、いんですか。』
「怒っちゃったー?」
『だから、質問、に・・・。』
「寂しがり屋の鬼虎くん。子供な鬼虎くん。」
また笑みを浮かべる夢。さっきのとは違い陰気臭いものだった。
鬼虎の眉間に皺が寄った。(眉は無いが。)
「僕はね、アンサーだよー?」
『怪人、アンサー。それぐらい、知って・・・ます。』
「うん、そうだよ。怪人アンサー。」
だから、何でも知ってるんだよ。
にこにこ。イライラ。
『・・・で?』
「あら、冷たいー。」
『質問に、答えて・・・ない、ですよ。』
「本を読んでる振りをしてまで、帰ってほしくなかったんでしょ?」
『・・・別に。』
「ふーん・・・。」
ならいいや。
その言葉の意味を確認する前に、夢は立ち上がった。
「じゃあね。」
『・・・。』
そのまま玄関へと足を運び、靴を履いてもう一度、振り返った。
「少しは大人になればー?もう君の両親は居ないんだから。」
いつまでも甘えたな子供になんて、なれないんだよ。
あ、ごめん。そもそも甘える相手が居なかったね。
長いようで短い置き言葉を残し、彼の後姿は消えた。
空間の中には、一人だけ。
ギュッと本を握り締め、鬼虎はそっと笑った。
『貴方は・・・やっぱり嫌いです。』
END
mari0922 - 2013/03/19 17:21:33 |違反報告
-
・・・で?と聞かれたらそれまでですが。
まあ、久しぶりに鬼虎君描けて良かったです^^
mari0922 - 2013/03/19 17:24:13 |違反報告
-