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ディートハルトの小説(再掲) (10月10日 6時)


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占いツクールに投稿したものは消してしまったのでコメント欄に再掲します。

テーマも何もないまま二人喋らせていただけなのでとんでもなく淡白な味付けですが
御暇潰し程度にお召し上がり下さい。

未完ですが続きを書く予定は今の所ありません。
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作品のタグ:アニマル学園, 小説
元となったイラスト:小説ディートハルト

元イラストから派生した全作品
/ 派生イラスト再生

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「ねー、こんなヒトだらけの場所で本当にやっていけると思ってるの?」

 毛糸のようにもこもこと膨らんだ尻尾が右へ、左へと揺れる。少女は自身よりも少し背の高い青髪の男を見上げながら声をかけた。短く切りそろえられたライトブラウンの髪はくるくるとしたうねりが付いており、軟らかそうな毛質はどこかヒツジのそれを思わせる。
 青髪の男はほんの少しだけ振り向くと、また前を向いて長い廊下を歩いていく。シャツの裾からは髪の色と同じ青色の尻尾が左右に揺れており、ヒツジの少女も男に合わせて少しだけ早足に付いて歩いている。

「それを言ったらお前の故郷も充分だろ? ソミカ」
「わたしは慣れてるけどさーぁ、ディーターはどうなのって聞いてるの」
「そんなのやってみなきゃ分からない」

 おどけた様子でディーターと呼ばれた男が笑う。一方ソミカは落ち着きのない様子で右から左からとディーターの顔を見上げているが、彼の目は進行方向に真っ直ぐ向けられたままでソミカの方を向く様子はあまり無い。
 それでもふらふらと動き回るソミカを見かねてディーターがポケットからクッキーを一つ取り出すと、彼女はそれをひったくるように奪い取って包み紙を破り口の中へ放り込んだ。尻尾は相変わらず左右へぶんぶんと振られている。

「それと、尻尾ならスカートの上から出せよ。ぱんつ見えるぞ?」
「なっ……ば、ばかじゃないの!!スパッツくらい履いてるもん!」

 バカはお前だろ、とディーターが呟くのを横目にソミカは鼻息を荒くしながらスカートを押さえて尻尾を引き抜く。確かにスパッツを履いているのは目に見えたが、公衆の面前でそれをする恥じらい心のなさにディーターはため息をついた。仮にも女子だというのに、堂々と服をめくるのは……
 ソミカが廊下の端でせっせと尻尾ポジションの整理をし終える頃には、ディーターは既に何メートルも先を歩いていた。見ればあと少しで階段にたどり着く、という所で慌てて駆け足で後ろに追いつくとディーターの足に一蹴りを食らわせる。青色の尻尾が跳ねるように動いて、青色の瞳がソミカを睨み付ける。

「なに?」
「なに、じゃないわよ。置いていかないでよ」

 ソミカが負けじと睨み返して文句をつけるが、ディーターはよく分からないという顔をしながら首を傾げている。相手の事を考えもしないその無神経さに、ソミカは大きな背中をぽかぽかと殴りつけながら階段に足をかけた。
 
神月アリス - 2013/10/10 06:12:49 違反報告 -
 
 彼は階段の踊り場で立ち止まると、壁に背を寄せた。ソミカもそれに合わせて隣に立つ。
 腕を組んだディーターの両腕は青い体毛に覆われており、指先には赤黒い爪が生えている。人間のそれよりも一回り大きな腕を組んでしばらく考えるように黙ると、ふと腰に下げたポーチの中から板チョコレートを取り出して銀紙を剥ぐ。一欠けらだけ折ってソミカに差し出すと少女はそれもまた口の中に放り込んだ。

「でぃーたーさんのうでは、おおきいのね」
「それはね、お前を強く抱きしめるためだよ」
「でぃーたーさんのくちは、おおきいのね」
「それはね、お前を……」

 言いかけて、やれやれと首を振りながらため息をつく。相手は他ならないヒツジ族だ、お前を食べちゃうぞなんていい加減言い飽きた台詞を言う気にもならなくてチョコレートをかじって宙を見る。
 実際には人型の生物を喰らうなんてディーターはしようとも思わないが、野生の動物なら何匹も殺して食ってきた。その中には人間と同じ大きさほどあるシカや、ソミカと同じヒツジやヤギも含まれている。表面上ではただの冗談だよと言っていても、どこか、あながち嘘とも言えないような気持ちを抱いていた。
 正直に言えば彼の故郷はそれほど治安の良い場所ではなかったのだ、だからこそ、……

「ねえ、ディーターの故郷ってどんなところだったの?」
「えっ? あ、故郷? 俺の? ……ウン……どうして突然そんなことを?」
「聞いてみたいから聞いたの」

 このまま深い追憶への旅に出ようか、と言う所で急に現実に呼び戻され、ディーターはうーんと首をひねった。一瞬だけ思考を読み取られたかとも思ったが、ソミカ相手に限ってそれはないだろうと断定して、故郷とは何かを記憶の中で振り返っていく。

「……化け物と、化け物と、化け物が住んでたな」
「なにそれ……、じゃ、そこに住んでたディーターもバケモノなの?」
「まあそうだろうな。なにせコンナノだし」

 そう言ってディーターは手をひらひらと振ってみせる。見るからに普通の人間とは言えない真っ青の毛に覆われた手を、ソミカの小さな手がつかまえる。
 ふかふか、と手のひらをまさぐりながら視線を落したままで。

「別にこれくらい、私の住んでた所でも珍しくないのよ」
「へえ、変わってるんだな」
「"変わってる"のが"普通"だったのよ」

 ふん、と鼻息をついて見上げてくるソミカに心当たりのないディーターは首を傾げる。
 その隙にソミカはチョコレートを奪い取って思い切り頬張った。

「だから誰もバケモノだなんてあるわけ無いじゃない! ばーかね」
「……バカはひどいよ。つーかチョコ返せ!」
 
神月アリス - 2013/10/10 06:22:56 違反報告 -

 "俺はソミカの方へ手を伸ばすと、残り少なくなった板チョコレートを奪い返した。"

 きっとこいつからしてみたら俺も数多くいる獣人族のうちの一人にしか見えていないんだろう。世間的に見ればそれが当たり前だ、場所によっては違うだろうが今日び獣人なんて珍しくもないんだから。それはこの学園でも同じ、動物由来の<ヒト>が集まる学園には俺と同族――「オオカミ」の生徒も大勢居る。

(でもな、それは違うんだ、ソミカ……)
「ちょっとヒトより違うところがあるくらいで自分をバケモノ呼ばわりだなんておかしいったらありゃしない。わたしのハトコのお兄さんなんて、えーと、いくつの混血だったっけ……?」

 俺の思惑をよそにソミカは一人で喋り続けている。彼女の故郷は中でも様々な種族が集う小さな町で異種族や混血に対する意識はないに等しいとは聞いていた。彼女自身も見た目はヒツジ?だが、いくつかの種族が混ざった混血だという。
 しかし<人間>という種族は昔から自分とは違うものを嫌う性質を持つものだ。俺のような「オオカミ男」など歩いているだけで猟銃に撃ち抜かれかねない、そういう風に教えられて育ったのだから自分を一般人のように思えなど今更無理がある。

「なあ、本当にお前は俺が"普通"だと思ってるのか……?」
「ん? なに? いつになく弱気じゃない? ディーター。そんなこと言われても、わたしにはそうとしか……」
「ライフルで頭を撃ち抜かれて頭蓋骨が砕けて、それでも平気でいられるオオカミ男でも?」

 ハッキリと力強く、俺は言う。
 絶えず続いていたソミカの言葉が、ピタリと止まった。

神月アリス - 2013/10/10 06:24:29 違反報告 -

「な、なにそれ……笑えない冗談」
「冗談じゃない。なんなら今ここで、試してやってもいい」

 赤茶けた煉瓦色の瞳が左右に泳ぐ。ソミカは動揺を隠すこともなくおろおろとうろたえていた。
 もちろん俺は再三に渡って自己紹介を続けていた、「俺はオオカミ男だ」と。
 しかし狼男に関する噂はいくつもあるから多くの連中にはただ「オオカミに変身するヒト」としか思われていなかったのだろう。こいつだってそうだ。

「"銀の弾丸でのみ殺すことができる不死身のオオカミ男"だったとしても……同じように思えるか?」
「それは……」

 ふと視線をソミカの方へ向けると、彼女の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。
 これが八つ当たりとして言った言葉なのは確かだったが、まさかそこまでソミカを追い詰めることになるとは思っておらず俺はあわてて表情をとりつくろう。

「わ、悪い! 俺そんなつもりじゃ……」
「ううん、わたしのほうこそごめん、無責任なことばかり言ってたよね、まだディーターのことよく知らないのに、勝手なことばかり言って……」

 そっと頭を撫でてやると、いくつかの雫を零しながらソミカは続けた。しかしその声は弱々しいものではなく、ひとつひとつ噛み締めるように言葉を選んでいるように感じる。
 俺はソミカが落ち着くまでしばらく待つと、ポケットからキャンディをひとつ取り出した。そいつを差し出すとソミカは包みを取って口に放り込む。

「その、俺……小さい頃から治安のよくない町に住んでて、人間の猟師に狙われる事がよくあったんだよ。今でもたまに撃たれてるけど……だから」

 言い訳にしかならないことは分かってたが、何か言わなければとしどろもどろになり、それでもソミカは頷きながら俺の話を聞いてくれた。
 自分だけが特別、だなんて思い上がったことは考えたくないけれど、周りとおんなじようにとも思いたくなかった。きっと俺はいざとなったら平気で人を殺してしまうし、平気で殺されてしまうだろうから、……

「皆と同じようにって、まだ俺には……」
「大丈夫、これから一緒に居られるようになればいいんだよ、ね!」
「……そうだな」
「また、弱気だなんてディーターらしくない! まだこれから始まったばかりなんだし、すこしずつ色々してけばいいんだって!」

 ソミカが俺の背中をバシバシと叩く。さっきまで泣きべそをかいていたくせに次には人を励ますようになるなんて随分と忙しい奴だな、と。

「俺だってたまには弱気になるよ」
「じゃ、お菓子でも食べれば?」
「……そうするか」

...continue

神月アリス - 2013/10/10 06:29:01 違反報告 -

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このあとディートハルトの故郷を描(えが)く過去編を書くつもりでしたが、
それは改めて後日に記事にするためここで打ち切りになります。

こちらの文章は占いツクールに投稿していたものから加筆や修正をしているため、
小説風診断の制限文字数より多くなっていますのでご了承下さい。

以下、通常のコメント欄になります。
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神月アリス - 2013/10/10 06:40:54 違反報告 -

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