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更新時刻:2015/11/25 22:51:00


容姿端麗頭脳明晰
その性格は横行闊歩

ニコラ・ロイスは屈しない


主様」


宝石の国の夢小説

 冬を越すのは心が辛かった。居なくなったアンタークを追いかけるようにどんどんフォスが変貌していく。
 憧れを見つけるのは素敵なことだけど、私には彼が駆け足をしているようにしか見えなかった。
―――眠いの?
―――少しだけね
―――無理しなくても良いんだよ
―――こうしてたいだけなの
 彼の肩に体重をかけても割れる心配はなく彼もそれを知っているのかのように気にも留めずぼんやりしていた。
 金ぴかになってしまった彼の両腕。ぐるぐる巻きのきらきらした両脚。耳の少し下で揺れる短い髪……。
 はじめのころはまだ私と似通っていた。この中では自分ひとりが異例な中でちょっとだけ似ていた先輩である彼がいることで1人では無い気がしていた。けれど、真っ白だった脚と腕は海へ。肩の上できらきら踊る髪先は他の隙間へ。彼は失くしてしまった。失くしては変わる変わる変わる……。
 どんどん遠ざかっていった彼。今はその背中についていくので精一杯。心なしか目元までアンタークに似てきている。彼は進化してしまった。私を1人おいて。
 彼と私をつなぎとめている冬は次第に緩みはじめる。
「あのね、フォス―――」
「すごーい!」
息をぐっと止めた。私、髪を切ろうと思うの。続けようとしたその言葉は喉の上、顎の下で異物と化した。
 彼は巣立ったのだ。彼は1人、海の底から少しずつ浮上したのだ。それからはもう何も心配はいらない。既に巣立った皆が彼を引き上げた。
 彼は1人海を出た。私はそのまま海の底で、独り―――

「髪」
「えっ、」
どうしたの。今まですれ違うだけだったのに、彼は私の変化に気づいたらしい。
「結ってみたの」
 右耳の裏側あたりから、一つに。肩に下がった髪の端をくるくると弄ぶ。レッドベリルが私のために、と用意してくれた皆とは色違いの(恐らくアンタークとおそろいの)夏服に白い髪が良く映えた。
 少し体の大きくなった彼はそっと髪に触れゆっくり掬っていった。
「前のも好きだったよ」
じゃあね、急がなきゃ。彼は軽やかに空を切り駆けていく。駆けていく先には黒く長い髪を光に反射させるボルツ―――。
 変わることを進化と、巣立ちと言うなら。私は彼を追いかけずに進化しようとしたのに。
「―――ばか」
貴方のせいで退化してしまうじゃない。

 真っ赤な顔を白い手で覆っていれば。ダイヤが肩に手を当てにっこりする。
「話は長くなりそうね」
と。


手の甲に

敬愛のキスを

水霜国俊は裏切らない


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