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箱庭の住人 (7月11日 20時)
果樹園の住人は決まった季節しか目を醒まさない。
果樹園の大樹は命芽吹く春に
果樹園の魚は水踊る夏に沈み
果樹園の蝶は秋に憧れ人間になった
冬は果樹園の生き物全てが眠りにつく
果樹園の住人は季節に縛られ
互いに互いを知る者と知らない者がいる
最初の蝶は元々夏に縛られていた。しかし秋に対する強い憧憬が人間へと姿を変えた。
人間となった彼女は季節を自由に行き来できるようになったはずだが、それを彼女はしなかった。他の果樹園の住人が来ても会いに行こうとはせず秋にとどまっていた。
冬が近づくと彼女はおやすみと一言告げて眠りにつく。
二番目の大樹は根が地と深く絡み合い春に囚われた。
動くことの出来ない大樹は枝にとまる鳥や、新しい命たちに語りかけたり、傍らに咲く花を愛でた。
しかしふと彼女は思うようになった。眠っている間に微かに聞こえる水の音と、乾いた音をたてる葉の音の正体は。季節の壁の向こうにはなにが、誰がいるのか。
三番目の魚は足を尾びれに首に鎖で夏に縛られた。
いつも想うのは顔も声も名前も知らない人。胸の息苦しさと少しの幸福感の正体は知らないまま、水の中を漂っていた。
あるとき水の外は青々しい草木が生い茂っていることに気付いた好奇心旺盛な魚は迷わず水から飛び出した。そこでここはさびしい箱庭であることを知る。
住人が一箇所にそろうと異常気象が起こる。
果樹園は荒れ果て草木は倒れ花は萎れてしまう。
作品のタグ:果樹園
めたのさん>
ありがとうございます!!!!!!そう言ってもらえてとても嬉しいです
(お久しぶり)
アデダイさん>
ありがとうございます~!
魚>
やっとぃきたの………