八女 2019/5/27 1:07
2019/5/27 0:47
2018/9/10 21:52
2018/9/10 21:28
清女(きよめ)
名の通り、清い力を持った乙女のこと。また、その力を持った巫女。
清女の力は膨大。その血を飲めば力が溢れ、肝を喰らえば不老不死と成ることが出来る。
一切の穢れを寄せ付けない稀なる魂。その清浄さ故に美しく、悲しく、残酷な数奇の運命を辿る。
_
生き物である限り、全てのものは何かしら穢れを持っている。
心であれ身体であれ、それが魂であったとしてもだ。
だが、清女となった者にはまったくといって良いほどそれがない。
綺麗すぎる水に生き物が住めないように、それの存在はありえないものなのだ。
清女が地上に生まれ落ちるサイクルは数百年に一度。鞠の前にももちろん別に清女が存在していた。
ただしこの際、前の清女と鞠との繋がりは無い。
鞠は妖の森の深くに位置する集落で生まれた。その集落の巫女である母と頭領の父を両親に持つ。
ある時母を妖の森に生贄として送り出した父を怒り、幼いながらにも清女の力を目覚めさせた。その後怒りに任せ父を殺し集落を潰し、母を追いかけ妖の森に入る。
そこで一匹の饒舌な土蜘蛛と出会う。
その土蜘蛛は鞠の母を食べた土蜘蛛だった。そして鞠も食べられるはずだった。
しかしむしろ鞠はその土蜘蛛を喰らい、己に取り込んでしまった。普通はそのまま妖に堕ちるはずだったが、鞠の中の清女の力が反発して完全な妖に堕ちることはなかった。
鞠は清女の力と土蜘蛛の力を持つ半妖になった。
輪廻は鞠に罪を科した。今後ずっと清女に縛られ幾度も転生を繰り返す罪を。
そこから鞠は転生するたびに清女として生まれた。
繰り返すたびに積もる前世の記憶と共に、鞠は何度も生きた。
転生して間もない頃は前世の記憶が無い。しかしある時フラッシュバックのようにして思い出す。
最初は二十数年後に、次に転生したときは十数年後に。転生を繰り返すにつれて記憶は早く甦る。
稀に思い出さず幸せに終わりを迎えることがある。しかしその時の記憶もしっかりと魂に刻まれる。
ひと時の幸せを思い出し、また鞠は苦悩し絶望を味わう。
「真っ白じゃない。綺麗じゃない。それでも貴方は私をきれいだと言うの。どうして?」
「私は、鞠よ。___・・・忘れないでね」
「痛いわ。でもだめ。笑っていればいつか幸せになれるのだから」
「そうね。貴女は我慢していてとっても偉いのよ、悪い子なんて誰が言うのかしら」
「また私は失うの?大切なひと」
「白い貴女は黒に呑まれた。手を、伸ばしたのに。届いたのに」
「私にはやらなければならないことがあるの。”今の私”がやらなければ、また、ずっと」
「やめて、やめて。貴方たちに何がわかるの」
「先輩と初めて会った時は吃驚したわ。でも、あれが私達の始まりだと思うと愛おしくて仕方ない」
「わたし、とっても幸せよ」
「どうして、忘れてしまっていたの」
補足
鞠の母を生贄に送り出した訳
鞠の生まれた集落は生贄を出すことによってその安全と繁栄を守っていた。母と父の間に愛はなかった。鞠が生まれそれも母の力以上だったこともあり、次の生贄に困らなくなったので父親はさっさと母親を生贄に出した。
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清女(きよめ)
名の通り、清い力を持った乙女のこと。また、その力を持った巫女。
清女の力は膨大。その血を飲めば力が溢れ、肝を喰らえば不老不死と成ることが出来る。
一切の穢れを寄せ付けない稀なる魂。その清浄さ故に美しく、悲しく、残酷な数奇の運命を辿る。
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生き物である限り、全てのものは何かしら穢れを持っている。
心であれ身体であれ、それが魂であったとしてもだ。
だが、清女となった者にはまったくといって良いほどそれがない。
綺麗すぎる水に生き物が住めないように、それの存在はありえないものなのだ。
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清女が地上に生まれ落ちるサイクルは数百年に一度。鞠の前にももちろん別に清女が存在していた。
ただしこの際、前の清女と鞠との繋がりは無い。
鞠は妖の森の深くに位置する集落で生まれた。その集落の巫女である母と頭領の父を両親に持つ。
ある時母を妖の森に生贄として送り出した父を怒り、幼いながらにも清女の力を目覚めさせた。その後怒りに任せ父を殺し集落を潰し、母を追いかけ妖の森に入る。
そこで一匹の饒舌な土蜘蛛と出会う。
その土蜘蛛は鞠の母を食べた土蜘蛛だった。そして鞠も食べられるはずだった。
しかしむしろ鞠はその土蜘蛛を喰らい、己に取り込んでしまった。普通はそのまま妖に堕ちるはずだったが、鞠の中の清女の力が反発して完全な妖に堕ちることはなかった。
鞠は清女の力と土蜘蛛の力を持つ半妖になった。
輪廻は鞠に罪を科した。今後ずっと清女に縛られ幾度も転生を繰り返す罪を。
そこから鞠は転生するたびに清女として生まれた。
繰り返すたびに積もる前世の記憶と共に、鞠は何度も生きた。
転生して間もない頃は前世の記憶が無い。しかしある時フラッシュバックのようにして思い出す。
最初は二十数年後に、次に転生したときは十数年後に。転生を繰り返すにつれて記憶は早く甦る。
稀に思い出さず幸せに終わりを迎えることがある。しかしその時の記憶もしっかりと魂に刻まれる。
ひと時の幸せを思い出し、また鞠は苦悩し絶望を味わう。
「真っ白じゃない。綺麗じゃない。それでも貴方は私をきれいだと言うの。どうして?」
「私は、鞠よ。___・・・忘れないでね」
「痛いわ。でもだめ。笑っていればいつか幸せになれるのだから」
「そうね。貴女は我慢していてとっても偉いのよ、悪い子なんて誰が言うのかしら」
「また私は失うの?大切なひと」
「白い貴女は黒に呑まれた。手を、伸ばしたのに。届いたのに」
「私にはやらなければならないことがあるの。”今の私”がやらなければ、また、ずっと」
「やめて、やめて。貴方たちに何がわかるの」
「先輩と初めて会った時は吃驚したわ。でも、あれが私達の始まりだと思うと愛おしくて仕方ない」
「わたし、とっても幸せよ」
「どうして、忘れてしまっていたの」
補足
鞠の母を生贄に送り出した訳
鞠の生まれた集落は生贄を出すことによってその安全と繁栄を守っていた。母と父の間に愛はなかった。鞠が生まれそれも母の力以上だったこともあり、次の生贄に困らなくなったので父親はさっさと母親を生贄に出した。
父・現東宮家当主、頼久の実の兄。当主になる前に失踪し妖の森に逃げ集落をたてる。逃げる際に東宮家の巫女であった鞠の母を拉致した。下衆野郎。
母・東宮家の巫女。鞠は清女として生まれたが、鞠の母は清女ではなく普通の巫女だった。18の時に鞠の父に拉致される。心やさしく慈悲深い。
東宮家は血筋を大切にしている。東宮の血を守るために、結婚は東宮の者同士としか認めていない。
鞠の父、母、頼久、頼は東宮本家の者である。鞠の母は元々頼久の許嫁であったが、鞠の父と共に行方を眩ませてしまう。
鞠は現在東宮家に保護という形で居座っているが、実は東宮家との血のつながりはばりばりあったというか生粋の東宮家の者である。
鞠の父は集落と自分を守るために、集落周辺の森を支配していた土蜘蛛に取引を持ちかける。それは「生贄を出すから、この集落の繁栄と安全を約束してほしい」というものだ。
土蜘蛛は呪いと怪力の妖である。呪いはまじないとして集落を栄えさせ、土蜘蛛の配下にある妖たちがむやみに村を襲わないようにその頭である土蜘蛛に交渉したのだ。土蜘蛛は数年に1人、生贄を要求した。
土蜘蛛の力は呪いとして鞠の魂に絡みつき、転生しても執念深くついてくる。
何度も繰り返すうちに土蜘蛛の力は鞠の奥深くに沈んでいくが決して消えることはない。また、何かの拍子に土蜘蛛の力を使うと一気に奥から浮上してくる。それまで使わなかった分蓄えられてきた力が溢れ出し身体に形として現れる(耳、角、蜘蛛の足等)。そうなったら土蜘蛛の力を放出して安定するまで元の姿に戻ることは難しい。
東宮家は陰陽師の家柄であるにも関わらず、半分は土蜘蛛である鞠を保護している。それを他の陰陽師家は良しとしておらず、東宮家当主の頼久には秘密裏に土蜘蛛(鞠)討伐の計画がされていた。元々半妖というものに理解がなかったこともあるが、身内に敵がいては落ち着かない、いつ理性をなくし本家を襲うかわからない危険因子を早々に取り除きたかったのだろう。
計画は夜に実行され、鞠は殺されるはずであったが激しく抵抗したので討伐は明け方、妖の森が朝霧に包まれる中で終わった。
その時鞠の歳は18歳であり、奇しくも鞠の母が鞠の父に拉致されたときと同じ歳である。
「あかいめが、くもが、くもがくる!」
病に伏せた人々は譫言のようにこう言って息を引き取ったという。
のちに土蜘蛛の呪いではないかと噂がたったが、それを知る討伐に関わった陰陽師家は全滅したのですぐに噂は聞こえなくなった。