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癒 (3月14日 23時) 非公開
アジア支部で「あの男」を見たとき、まるで自分がそこに在るかのような錯覚に襲われた。
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コメント一覧
彼と自分はよく似ていた。立ち振る舞いを見るだけでわかった。彼はわたしと「同じ部類」の心をもっているようだ。そう、全く似通っている。その気の使い方、笑顔の作り方、人へ呼びかけるときの声色まですべて「それ」でしかなかった。彼は「人に尽くすことで幸を得る人間」だ。
NTT - 2018/03/14 23:18:45 |違反報告
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そしてなにより、彼の背後に良くないものを感じた。自分の背中に憑いているものではない。あからさまだ。心なしか後ろを歩く同僚の顔も青く、どこか居心地が悪そうだ。それほどに、男の纏う雰囲気は不穏だったのだ。
NTT - 2018/03/14 23:20:23 |違反報告
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「なあ、亜栗。」
「なんだい。」
呼びかけに応じる声は草臥れている。同僚(正確には違うが)の亜栗は、異様に勘の鋭い人間だった。どんな変化にもいち早く勘づき、ときに肌を粟立たせている。それは今もしかり。
「彼は?」
「彼? ……ああ、彼、彼ね。服装の通りアジアの人だろうね。」
「そう言うことを聞いているわけじゃないよ。いつものきみならほら、言うじゃない。「気味が悪い」……だのさ。」
「べつに……。ぼくにもよくわからないんだよ。気味は悪いかもしれないけれど。」
亜栗はそれっきりだった。普段の賺した顔ではなく、舟に酔ったようにげんなりとした面持ちで、わたしの隣に立ち尽くすばかりだった。
NTT - 2018/03/14 23:26:58 |違反報告
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たしかに男はアジア支部の人間だろう。胸元の勲章が確固たる証拠だ。だが、本当にそれでいいのだろうか。軍帽と前髪の間から覗く黒い眼(まなこ)は、果たしてなにを見ている?
「大佐。」
呼びかけで振り返ると、そこには目に親しみ深い姿があった。班は違えど同じ部隊に所属している、つまり第六の面子である男がいたのだ。彼は軍帽を手に持ち、おどけたように肩をすくめて言った。
「ペン。」
「ペン?」
「見ませんでした?」
「アバウトな質問はよせよ、霧島中尉。詳細を頼もうか。」
霧島は足を遊ばせている。さして探すつもりもないのだろう。そもそも本当に、ペンをなくしたのだろうか。自分に声をかけるための適当な嘘かもしれない。霧島はそう言うやつだ。
NTT - 2018/03/14 23:34:01 |違反報告
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霧島と話し込んでいるうちに、亜栗はどこかへ消えていた。少し先で他の隊員と談笑している、あの男の放つ異様な空気に、とうとう耐え切れなくなったのかもしれない。一方、そのあたりには鈍い霧島は、つやつやとした頬で話を続けている。
「そう言えば、亜栗くん見ました? ペンはもういいんで。」
「今の今までここにいたさ。」
「ええー、困るなあ。亜栗くんが持ってるんですよお。」
「ペンを?」
「イエス。」
人差し指ひっかけた軍帽を回して、霧島はけらけら笑っている。全く冗談な男だ。毛の先から足元までそれがあらわになっている。昨日まで黒かった髪は銀に変わり、無骨なブーツを履いていた足は華奢なピンヒールに包まれている。
「それなら尚更、わたしに聞く必要なかったじゃない。」
「でもお。」
なにがでもなのかさっぱりわからない。わたしが薄く苦笑していると、霧島の足がカツンと硬質な音を立てた。ずいぶんと勢いがあった。
「あっ。」
踵と同時に、霧島も声を上げた。驚いたように目を見開いている。
「なに。ペンでもあった?」
「いやあ、ペンではなくう……。あれ。」
不躾にさされた指を目線で追うと、例の男に行きついた。顔に出ていたかはわからないが、内心ではどこか浮き足立つ自分がいた。
「指をさすなよ。彼がどうかした?」
あくまでも茶化して言うと、真顔だった霧島の表情も緩んだ。いつも通りのだらしない笑顔だ。
「友達。」
「ああそう。……そう言えば、霧島中尉はジャパニーズだったね。」
「えへへぇ、ねえ、そうなんすよねえ。おれ、見ての通り、ジャップなんです。おーい。」
そう言って大手を振り上げながら、霧島は男の方へ駆けて行った。ピンヒールでもしっかりとした足取りだ。さすが鍛えているだけあるな、としょうもないことを考えていると、少し遠くへ行った霧島の口から、「昌平」と言う声が聞こえてきた。そうか。彼の名は昌平と言うらしい。如何にも日本人らしい名前だろう。わたしは一人で納得する。霧島と昌平は、まるで親し気に会話のつぼみを綻ばせているようだった。
NTT - 2018/03/14 23:49:54 |違反報告
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ひとつ、いらない謎が解けてしまった以上、わたしはここを去りたいと考えていた。とにかく、関わらない方がいい気がしていたのだ。彼が「あの」霧島と友人であるとするのなら、それは尚更だろう。……べつに霧島のことが嫌いなわけじゃあない。ただ――
NTT - 2018/03/14 23:52:24 |違反報告
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そう思って踵を返した瞬間、ナイフの切っ先が這うような感覚が背筋に触れた。慌てて首を回すと、そこには、
NTT - 2018/03/14 23:53:48 |違反報告
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まるで恐ろしい目をした「なにか」が、こちらをじっと見据えて「居た」。
NTT - 2018/03/14 23:54:44 |違反報告
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それは男の背中に張り付いていた。男を庇護するかのように大きな影を落としていた。全身にあり得ないほど黒いなにかをまとっていて、ただ目だけがこちらをじっと見ている。思わず瞳孔が開く。久しく感じていなかった恐怖と言う感情が、ほんの少し顔をのぞかせていた。
NTT - 2018/03/14 23:56:11 |違反報告
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「イェニー。」
女なのか男なのか、わかるようでわからない声が聞こえた。胸元にしまい込んだ十字架が熱い。
「見ない方がいい。あれは異端です。」
その声はわかり易く震えていて、性別こそないものの弱々しく、自らを敗者であると認めるような雰囲気を感じさせる。自分の背後から聞こえる天使の声に、わたしは従う他なかった。それが最善だったからだ。
「ああ、そうだね。」
それきり、あの昌平と言う男を見ることはなかった。ただ、アジア支部の隊員が、ある任務中に突然塵になって消えたと言う、漠とした話を耳にする機会があった。わたしはその塵の正体が彼であり、また、彼の背中に張り付いていた悍ましい「それ」であると、未だ信じ続けている。
NTT - 2018/03/15 00:01:12 |違反報告
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わたしが思うに、あの悍ましいものは神であったのだ。悪魔や天使とはまた違う、そしてわたしを庇護するもの曰く「異端」な存在。どう見てもイレギュラーしかなく、また深い自由意志を持ち、気紛れに姿を現すことのできる強大な力。人間を嬲り殺しにする悪魔にすらできない芸当をやってのけるのだから、あれは相当だ。わたしは常々考えている。神とは人間の作り出した偶像であり、やがてそれが意思を持ち、独り歩きを始めたものなのではないかと。もしそうであるとすれば、あの醜く恐ろしい姿にも説明がつくだろう。人間の陳腐な頭から生み出せるものなど高が知れている。
NTT - 2018/03/15 00:04:32 |違反報告
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しかしなによりわからないのが、(仮にあれが神であったと仮定して)、「なぜ神があの男に憑いたのか」だ。こればかりはどうしても想像が追い付かず、そしてわたしは彼のことをほとんど知らないので情報もなく、思考を断念する他なかった。だが、それでいいのだと天使は言う。試しに亜栗へ相談するも、似たような答えが返ってきた。やはり、あれに触れてはならないのだろうか。ダメもとで霧島にも話を振ってみたが、意外な回答がなされるだけで、なにも核心に迫るものは得られなかった。
NTT - 2018/03/15 00:07:17 |違反報告
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「え、昌平? しょーちゃんですか? ……あいつはねえ、なんでしょうね。変なやつですよ。……賢者ではないかな。おれとおんなじ、愚者の類でしょうねえ。」
NTT - 2018/03/15 00:08:27 |違反報告
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シグニフィケイター
NTT - 2018/03/15 00:11:13 |違反報告
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と、言う話です。十字軍へようこそ、懐かしいでござる~
NTT - 2018/03/15 00:11:51 |違反報告
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プロット(笑)(笑)(笑)(笑)もなんもなくその場その場で書いた話なのでなに言ってるかわからないと思うけど自分で読んでて「クソゴミ良」と思うし、その実超満足してる このいぇに子もうまく描けたし寝
NTT - 2018/03/15 00:18:53 |違反報告
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あ、すごいどうでもいい話するけど、イェニ描くときは普通の十五歳より全体的にしゅっと男性的に描くこと意識してます 顔も身体も るは普通の十六歳(マイナス四歳)くらいで描いてる では寝
NTT - 2018/03/15 00:20:09 |違反報告
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